さて、1日の最初の電車のことを何と呼びますか?
JRをはじめとする多くの鉄道会社は「初電」と読んでいますし、現在は辞書にも載っています(たとえばgoo辞書)。私自身、日常生活では「初電」を常用しています。
しかし、「初電」が辞書に載るほどに市民権を得たのは、案外最近かも知れません。私は1973年に刊行された小学館「新選国語辞典(新版)」を未だに所有しています。そこには「終電」はちゃんと載っていますが(この件についてはあとで詳述)、「初電」は載っていません。
ところで、1日の最初の電車のことを「始電」と呼ぶ方もいらっしゃいます。ただし、こちらの言葉は少なくともWeb辞書には載っていません。Google検索でも、「初電」「終電」は4万件以上HITするのに対し、「始電」「終電」は1万件以下です(なお、「終電」とセットで検索する理由は、電車関連以外の意味で多数ヒットしてしまうから)。字の意味から考えても、「一日の初めの電車」と解釈すれば、「初電」の方が自然に思えてきます。
ということは、「初電」が正しい日本語で、「始電」は誤用なのか? と一瞬思ったのですが、そうとは言い切れない事情があることに気付きました。
先程言及した30年前の国語辞典の「終電」の項には「終電車の略」と書かれています。ということは「始発電車」の略と考えれば、「始電」も正当化されます。
goo辞書の「始発」の項には、
(1)列車・電車・バスなどが一日のうちで、最初に出発すること。また、その車。
⇔終発
「―電車」「―に乗る」
(2)乗り物の運転区間で、最初にその場所から発車すること。
「―駅」「上野―の急行」
とあります。「始電」を使う人は、(1)の意味で用いているわけです。ところが、「始発」が2つの意味を持つと紛らわしい場面が生じるので良くない、と主張する方もいます。始発(解散宣言・「正しい日本語を守る会」)から引用。
(1)の意味で使うなら、「初電」や「一番電車」と言えば紛らわしさを排除できるからまだ良いのだ。問題は、(2)を言い表したい場合である。短い言い方は思い当たらない。「始発電車」と表現すれば、一番電車という意味に解されてしまう場合がある。
「この駅を始発駅とする一番電車」は「始発の始発電車」とでも言うのだろうか。
私から一つ補足。余り普及していませんが「初発」という言葉も辞書に載っています。(1)の意味での「始発」のみを表すので、紛らわしさは解消されます。
実際の会話では、前後関係から相手に正しく伝わる可能性が高いので、(1)の意味での「始発電車」が絶対にダメとは言えないかも知れません。とは言え、誤解の可能性を減らせるという意味で、「初電」の方が合理的であることは間違いなさそうです。
それにしても、「はじめ」については2つの漢字の使い分けを要求するのに「おわり」の方は文字が1種類しかない日本語って、何だか不思議に思えてきます。
その日一番最後の列車―終列車 終電車 終電
その駅から運転が始まる列車―始発列車 始発電車
言い方を統一すればよい。統一すべき。
NHKが悪い。ここが区別、統一しないから。
NHKが区別、統一すればマスゴミ各社はこれに従う。いずれ社会において浸透、定着する。
辞書は社会一般の使用実態を出版社が解析、判断して載せているだけ。それが正当だとは限らない。
日常用語には誤用も多数存在するが、それが浸透していればそれも載る。
辞書が言葉を定義するのではなく、辞書は実態を反映するもの。
正当な用語法を求めるなら、専門が使っている用語法に従うのがいいと思う。
ここで言うなら鉄道会社の言い方に倣うのが最適。