2005年10月09日

初電 vs. 始電

今日の「初電」〜8時頃まで行われていた南武線の工事は無事終わったのでしょうか。

さて、1日の最初の電車のことを何と呼びますか?

JRをはじめとする多くの鉄道会社は「初電」と読んでいますし、現在は辞書にも載っています(たとえばgoo辞書)。私自身、日常生活では「初電」を常用しています。

しかし、「初電」が辞書に載るほどに市民権を得たのは、案外最近かも知れません。私は1973年に刊行された小学館「新選国語辞典(新版)」を未だに所有しています。そこには「終電」はちゃんと載っていますが(この件についてはあとで詳述)、「初電」は載っていません。

ところで、1日の最初の電車のことを「始電」と呼ぶ方もいらっしゃいます。ただし、こちらの言葉は少なくともWeb辞書には載っていません。Google検索でも、「初電」「終電」は4万件以上HITするのに対し、「始電」「終電」は1万件以下です(なお、「終電」とセットで検索する理由は、電車関連以外の意味で多数ヒットしてしまうから)。字の意味から考えても、「一日の初めの電車」と解釈すれば、「初電」の方が自然に思えてきます。

ということは、「初電」が正しい日本語で、「始電」は誤用なのか? と一瞬思ったのですが、そうとは言い切れない事情があることに気付きました。

先程言及した30年前の国語辞典の「終電」の項には「終電車の略」と書かれています。ということは「始発電車」の略と考えれば、「始電」も正当化されます。

goo辞書の「始発」の項には、
(1)列車・電車・バスなどが一日のうちで、最初に出発すること。また、その車。
⇔終発
「―電車」「―に乗る」
(2)乗り物の運転区間で、最初にその場所から発車すること。
「―駅」「上野―の急行」

とあります。「始電」を使う人は、(1)の意味で用いているわけです。ところが、「始発」が2つの意味を持つと紛らわしい場面が生じるので良くない、と主張する方もいます。始発(解散宣言・「正しい日本語を守る会」)から引用。
(1)の意味で使うなら、「初電」や「一番電車」と言えば紛らわしさを排除できるからまだ良いのだ。問題は、(2)を言い表したい場合である。短い言い方は思い当たらない。「始発電車」と表現すれば、一番電車という意味に解されてしまう場合がある。

「この駅を始発駅とする一番電車」は「始発の始発電車」とでも言うのだろうか。

私から一つ補足。余り普及していませんが「初発」という言葉も辞書に載っています。(1)の意味での「始発」のみを表すので、紛らわしさは解消されます。

実際の会話では、前後関係から相手に正しく伝わる可能性が高いので、(1)の意味での「始発電車」が絶対にダメとは言えないかも知れません。とは言え、誤解の可能性を減らせるという意味で、「初電」の方が合理的であることは間違いなさそうです。

それにしても、「はじめ」については2つの漢字の使い分けを要求するのに「おわり」の方は文字が1種類しかない日本語って、何だか不思議に思えてきます。
posted by D Slender at 20:13 | ムンバイ 🌁 | Comment(1) | TrackBack(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その日一番初めの列車―初列車 初電車 初電
その日一番最後の列車―終列車 終電車 終電

その駅から運転が始まる列車―始発列車 始発電車

言い方を統一すればよい。統一すべき。
NHKが悪い。ここが区別、統一しないから。
NHKが区別、統一すればマスゴミ各社はこれに従う。いずれ社会において浸透、定着する。

辞書は社会一般の使用実態を出版社が解析、判断して載せているだけ。それが正当だとは限らない。
日常用語には誤用も多数存在するが、それが浸透していればそれも載る。
辞書が言葉を定義するのではなく、辞書は実態を反映するもの。

正当な用語法を求めるなら、専門が使っている用語法に従うのがいいと思う。
ここで言うなら鉄道会社の言い方に倣うのが最適。
Posted by 通りがかり at 2022年09月20日 10:40
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