2007年11月03日

「愛国心」論

愛国心の評価、違憲性なし(日刊スポーツ)
 愛知県津島市の市立小学校の男性教諭(42)が、通知表に愛国心の評価項目があるのは思想及び良心の自由を保障した憲法19条に違反するなどとして国や市、海部地区校長会などに10万円の支払いを求めた損害賠償請求訴訟で、名古屋地裁は1日、訴えを棄却した。

 判決理由で田近年則裁判官は、教諭は国語や算数の担当で、愛国心の評価をする6年生の社会科担当ではなく、利益の侵害は受けていないと指摘。「項目はやや情緒的で客観性に議論がある」としながらも「児童の心の内面自体を評価するものではない」とした。

 判決によると、校長会は2002年、6年生の通知表に愛国心の評価項目を追加したひな型を作成。05年度まで教諭が勤務する小学校などで使用された。


まずはこの判決に対する所感を.利益侵害なしという理由で賠償請求を棄却した判断は妥当です.しかし,通知表での愛国心評価が違憲でない理由を「児童の心の内面自体を評価するものではない」としたのは少々疑問.私が裁判官だとしても違憲判断は下しませんが,その代わり別の意見を付け加えます.具体的には最終段落で述べます.

日本では「愛国」という言葉を使うこと自体が揉め事の原因になります.理由はおそらく2つ.1つ目は,先の大戦の一時期に愛国啓蒙が国民に過度な犠牲を強いるための道具に使われて結果的に敗戦に至った歴史を忌み嫌う人が少なからず居ること,2つ目は一口に「愛国心」と言っても人によって考え方が異なったり,指し示す範囲が異なる場合が多いことです.

私自身は日本が大好きです.日本以外で生活しようと思いませんし,できれば海外旅行も避けたい人です.日本は治安面で比較的安全,日本語がどんな場面でも通じる唯一の国,都市部に限っては公共交通等のインフラが極めて便利,都市部に限っては他人に深く関わらなくても生きていける,等の美点を持っています.このような日本の姿を守るため,そして日本が更に住みやすくなるため,できることがあればしていきたいと思っています.私はそういう意味で日本を愛しています.

その一方で,日本の「伝統」のような非実利的な要素には概ね愛着を持っていません.もし「伝統」のせいで今の日本人が暮らしづらくなっていることがあれば,「伝統」を捨てる方が適切だと思っています.また,万が一日本の為政者が先の大戦並みの理不尽を国民に強いるような事態になったら(幸い今のところ兆候は見られないと感じますが),不本意ながらも日本を見捨てる可能性大です.こんな考え方を嫌う人も居るかも知れませんが,私は十分に愛国的だと思っています.

繰り返しになりますが,「愛国心」に対する考え方は人それぞれ.多様な考え方が許容されるべきだと思います.

児童生徒の「愛国心」を評価したがる教育関係者が,どのような意味で「愛国心」を使っているのか,どんな基準で得点を付けているのか,とても興味があります.上に述べたような多様な「愛国心」を許容する基準で運用しているなら,思想の自由を侵しているとは言い難いので無問題.一方,一面的な価値基準のみで評価しているなら,賛同するわけにはいきません.私が今回の事件の裁判長だったら,判決にこのような意見を付け加えることでしょう.

「愛国心」が不幸な歴史を経た言葉であることは否定しようがありません.必要無いなら使わない方が無難でしょう.もし使いたいなら,どのような意味で「愛国心」を使うのかきちんと定義してからにすべきだと思います.
posted by D Slender at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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