横浜市のJR戸塚駅の北側に存在した「戸塚大踏切」と言えば長年“開かずの踏切”の代表格に君臨していましたが、今年の3月25日に駅近くで線路の東西を結ぶ地下トンネル(とつか地下道)が開通したのに伴い、踏切は閉鎖されました。
【参考リンク】神奈川)戸塚アンダーパス、きょう開通 大踏切は閉鎖(2015.3.25 朝日新聞)
下のYahoo!地図を少しドラッグしつつ参照していただければ、トンネルの東端は「矢部団地入口」、西端は「清源院入口」という交差点であることが分かると思います(この交差点名は以下の文章で重要な役割を持ちます)。
線路東側から見た踏切跡です。歩道橋(戸塚大踏切デッキ)は既に昨年完成済み。
さて、地下トンネルは歩行者・自転車通行禁止で、旧国道1号と歩道橋を通るルートに誘導されています。建前上は車と歩行者を分離して安全を確保するためなのでしょう。
地図から分かる通り、車両専用のトンネルは「矢部団地入口」と「清源院入口」を直線的に結んでいるのに対し、旧国道1号の線路東側の部分は結構カーブしていて幾分遠回り。移動能力に劣る歩行者にこそ近道を提供する方が合理的だし、近い将来の超高齢社会にも相応しいと私は考えるのですが……
この写真は線路東側のトンネル入口。トンネル内の車線数は東→西(藤沢方面)は常時2車線。逆方向は途中1車線になるものの、道幅には余裕があります。
これなら、特にトンネルの幅を拡げなくても、車道と物理的に分離された自歩道を作ることは十分に可能。1車線を潰せば余裕です。車線を潰せば渋滞が発生するではないかと思われるかも知れませんが、私が観察する限りにおいて、このアンダーパスの交通量はさほど多くないのが実情。片側1車線で十分まかなえそうに見えます。ここは大事なポイントなので太字にしました。「開かずの踏切」の長い歴史を通じて、近辺のドライバーの多くは線路を越える別な方法(戸塚駅から約1.5km北東にある不動坂交差点経由や、駅の約1.5km南にある豊田立体)に慣れ親しんでいるのかも知れません。
まあ、アンダーパスには緊急車両ルートの確保等の目的もあるでしょうから、トンネルから歩行者や自転車を締め出す件には一旦目をつぶります。なお、線路東側については、歩行者が遠回りを回避する裏技(?)が存在します。それは、とつか地下道の上に設けられた公園内を通る方法。矢部団地入口交差点からトンネル方向に向かう車道の外側に歩行者専用の坂道がありますが、これが実は公園の出入口。以下のルート通りに進めば、ほぼ直線的に大踏切デッキに辿り着きます(新設の道を含むルートなので現時点の地図には道が無いかも知れませんが、ちゃんと通れます)。
なお、自転車がこの“近道”を利用する場合は、公園内および公園へのアプローチは押して歩きましょう(自転車は素直に国道1号を走行する方が良いと思います)。下の写真は公園内から矢部団地入口交差点を見下ろすアングルです。
トンネル内を歩行者が通れない件は承服するとしても、それでもこのアンダーパス周辺には歩行者から見た場合の問題点が残っています。むしろ、これから書くことが最大の問題点だと思っています。では、線路の西側に目を移しましょう。
ここから先は歩行者限定の話になります。たとえば線路東側からの歩行者が線路を越えて西の戸塚郵便局やサクラス戸塚まで最短距離で歩こうと思うと、いささか困ったことになります。
この場合、大踏切デッキを降り、国道1号の右側歩道を通行するのが最短距離なのでそのように進むと、何と「清源院入口」交差点のトンネルに面した部分には横断歩道がありません。近辺は歩行者横断禁止区間なので、ここを強引に渡るのは危険かつ違法。結局、大踏切デッキを降りてから50mほどで別の歩道橋(トツカーナやサクラス前のペデストリアンデッキに繋がっています)を利用する羽目になります。これほどの短距離の間で2回も歩道橋に登らせるというのは、私の価値観では歩行者冷遇に過ぎます。車の交通量が多ければ仕方ないのですが、既に述べた通り、このアンダーパスの交通量はさほど多くないのが実情なのです。
2回目の歩道橋上り下りを回避するなら、大踏切デッキを下りずに駅前に移動してトツカーナ内を通過する必要がありますが、明らかに遠回りになります。大踏切デッキ(下の写真の遠景)と清源院入口歩道橋(写真手前)がまっすぐ繋がるのがベストですが、建物等が完成してしまった今から追加工事を行うのは色々大変そうです。(※昨年の大踏切デッキ完成時、まちBBS等でこのことを問題視する意見が散見されました。歩行者をトツカーナモールに誘導しようという地元商店街の意向ではないかという推測も見かけましたが、真偽のほどは分かりませんね。)
歩道橋追加工事が無理だとしても、横断歩道と歩行者用信号を追加することはさほど費用をかけずに可能でしょう。トンネルの交通量の現状を考えても、少なくとも「清源院入口」のトンネル側に限っては横断歩道が存在しても全く問題ありません(ここは断言します)。そもそも、トンネル東側の「矢部団地入口」は横断歩道と歩行者用信号で運用できているのです。
なお、横浜市都市整備局の清源院入口交差点の歩道橋についてを参照すると、歩道橋設置に伴い横断歩道を廃止した理由が2点書かれています。少し引用してみます。なお、都市計画道路「柏尾戸塚線」とは地下トンネルを含む路線のことです。なお、ナンバリングは筆者によります。また、リンク先の歩道橋位置図と併せて読むとわかりやすいでしょう。
(1)柏尾戸塚線の「JR交差部〜清源院入口交差点」区間は、ゆるやかに左カーブしており、また急勾配の上り坂のため、横断歩道を残した場合、車から横断している歩行者を確認することが遅れやすい
(2)バス降車場から第1交通広場へ向かうバスが清源院入口交差点を左折することとなり、円滑な道路交通を確保するため歩行者と車を分離する必要があります
(2)の内容はまさにその通りで、私も国道1号と交差する横断歩道は無い方が良いと思いますが、地下トンネルはバスが通らないので「柏尾戸塚線」と交差する横断歩道を設置しない理由にはなりません。(1)のようにカーブや勾配に近い交差点は他にいくらでもあるので、理由としては弱いと思います。
それに、仮に上の写真の部分だけに横断歩道を増設したとすると、歩行者がここを横断できる時はトンネル側からの信号は赤なので、赤信号を視認して停車さえできれば危険はありません。
なお、「矢部団地入口」の方は歩道橋が無く、歩車分離信号式交差点になっています。歩車分離は信号待ちが長くなるデメリットがありますが、上の写真の部分だけに横断歩道を追加するなら、歩車分離ではない通常の信号でも運用可能と思われます。この場合、横断歩道の信号が青のタイミングで国道1号東側(旧踏切側)と旧長後街道側からの車が交差点に進入しますが、国道1号東側からトンネル側に右折する車両は少なめですし、旧長後街道は元々狭くて交通量も少ないので、横断歩行者はさほど交通の妨げにはならないでしょう(気になるようなら歩行者信号をやや早めに赤にしても良い)。※この辺りは清源院入口交差点拡大図を参照すると分かりやすいと思います。
ここまで書いて思ったのですが、横浜市の再開発担当者の頭の中には「駅に用事は無いけれども線路を越えて歩きたい人」の存在が無かったのかも知れません。だとしても、一応国道なのですから、車両も歩行者も快適に通行できることを目指すべきであり、国道から逸れる遠回りや過度な歩道橋利用を歩行者に強いるような道路行政のあり方には賛同できません。※こういうことを普段から考えている人は私以外にあまりいらっしゃらないかも知れませんが…
近年、横浜市内で横断歩道が廃止されて歩道橋化された典型例としては、新横浜駅入口交差点を思いつきます。こちらは戸塚駅周辺とは桁違いの広さと交通量の環状2号線が絡んでいるので横断歩道廃止もやむを得ない感がありますが、戸塚の清源院入口交差点の現状は、歩行者と車を分離し過ぎだと思います。
記事タイトルは「戸塚アンダーパス周辺の〜不満点」となっていますが、最終的には「清源院入口交差点の不満点」に帰着しました。もしも横浜市の担当者がここをご覧になっていたら、ぜひご一考いただきたいところです。
私のホームページ、というよりリンク集ですが、よければ御覧いただけれたらと思います。
http://greentoptube.hatenablog.com/
私達、交通弱者保護優先という交通の鉄則を反映した当たり前の通行環境整備を願う声は、意外に多いのだということを痛感します。
まだまだ自動車運転手らの交通弱者を軽んじる殺人予告じみた言説は目につきますが、粘り強く正していきたいと思います。