(この点については「政治系ブログは荒れる?」を参照)
近年、ネット上で見かける政治的文章には、保守派的色彩のものが増えていることは確かです。そのような文章の書き手は、一部の人からは「ネット右翼」と呼ばれています。揶揄的なニュアンスが感じられるかも知れない呼び名ですが、便宜上、この用語を使うことにします。
では、現時点で、「ネット右翼」とは具体的にどのような人たちなのか、考えてみたいと思います。
なお、欧米における元々の「左翼」「右翼」の定義は、主に政治的再配分を認めるか否かだそうですが、現代の日本における定義が欧米に追随する必要性は皆無だと思うので、好き勝手に定義します。
検索によると、今まで何人かの方が定義を試みています。
定義1:軍隊と集団的自衛権を肯定する者がネット右翼
【出典】五郎八の戯言ブログ
わかりやすい定義ですが、個人的に少々不満です。今の自衛隊は実質軍隊。自衛隊の存在を否定する人は希少なのではないでしょうか。集団的自衛権を否定する人は未だに少なくないと思いますが、イラクへの自衛隊派遣を機に、左派に共感を覚えつつ集団的自衛権を肯定する層も生まれていると思います。何より、この定義を認めれば、私自身がネット右翼に属してしまうことになり、不満です。
定義(?)2:「定義」というより「特徴」ですが…
一般的な右翼とは異なるネットウヨ(とくに2CH)の特徴(「バベルの塔」)より引用
・アメリカ政府に対する批判を許さない。
・小泉政権に対する批判を許さない。
・産経新聞に対する批判を許さない。
・唯一の価値基準は「国益」のようだ。「国益」の内容は明らかではない。
・北朝鮮に対抗するために対米従属姿勢をとるのが唯一の「国策」。
・左翼組織・党派よりも、市民運動をより嫌悪する。
・大東亜戦争に対する評価が明確でない。
・中国主敵論。ただし中国との経済競争には無関心。
・国内の反対者の多くは在日朝鮮人韓国人だと思っている。
・伝統的右翼を在日朝鮮人韓国人の陰謀団体だとして排斥。
・北方領土問題にはほとんど関心がない。
・中曽根康弘からNYタイムズまで「左翼」規定が極度に広範囲。
これは同意しかねます。この条件を全て満たす人は居るのでしょうか? 居るとしても限定されてしまうと思います。だから、近年明らかに増加している「ネット右翼」を説明するには相応しくないと思います。
これ以降は、最近の中国での反日運動を機に提案された定義です。
定義3:反日デモに関して、中国(韓国でも良いか)を罵倒する人はネット右翼
【出典】ネット右翼ということ(「Today's Crack」)
ヒステリックに反応して、かの国の連中を罵倒するのは、まあ、やはり 「ネット右翼」 の名に値するとみていいだろう。
一方、「また始まった、困ったもんだ」 程度のぼやきで済んでいる人までも 「ネット右翼」 と言うのは、ちょっと決めつけが単純すぎるというものだ。
明快かつ結構適切な定義だと思います(敬意を表してトラバします)。この問題に関しては、他国を罵倒する人、ぼやくだけの人、「日本も反省すべし」と主張する人、と3通りにはっきり分かれるように感じられます。
最後に、私自身が考えた定義を付記しておきます。
中国での反日運動に対する日本の各政党の主張を見ると、多くの点については一致しています。たとえば、デモを肯定したり尖閣諸島の放棄を主張したりするような政党はありません。主な違いは、首相の靖国参拝の是非だと思われます。この問題の主たる論点のひとつは、戦前の軍部の人たちをリスペクトするべきか否か、ということです。
要するに、第2次世界大戦前の日本に対する評価の違いが、現代の日本での政治思想の流れを語る上で無視できないと感じられるのです。
そこで、私は次のような定義を採っておきます。古臭い定義なのかも知れませんが、教科書検定が中韓で問題になっている現状を考えると、外せない論点だと思うからです。
定義4:自由主義史観(または歴史修正主義)の主張に概ね同意する人は「ネット右翼」
ここでの、自由主義史観とは、簡単に言うと「日本の戦前の歴史を肯定的に捉えよう」という考え方です。「新しい歴史教科書をつくる会」のサイトの主張に概ね同意できるかどうか、と言い換えても良いかも知れません。
以上、私自身の主張は明示せずに「ネット右翼」の定義について述べてみました。気が向いたら近日中に、中韓での反日運動に関する私自身の主張を書いておこうと思います。その際、左右いずれの人々とも議論するつもりはないことをお断りしておきます。
【後日追記】次のような関連エントリを書きました。この記事とは少し異なる視点からのネット右翼論です。
ネット右翼の姿勢