フレアーは私の少年時代のヒーローの一人。1982年、全日本プロレスでのリッキー・スティムボートとのNWA世界選手権戦をテレビで観たとき、凄いと感じました。対戦相手のスティムボートの攻撃を受けて受けて受けまくりながらも、最終的には自分のペースに巻き込んでしまう試合運びが私の好みに合っていたのです。当時、日本ではフレアーのようなタイプのレスラーは余り人気が無かったようです。しかし、今はファンの見方も変化したようですし、何より、プロレスラー仲間からの絶大な信頼と尊敬を得ているという事実を見ると、1982年当時の私の見る目は確かだったといえましょう(笑。
さて、フレアーの自伝「トゥー・ビー・ザ・マン」を読了しました。
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出版社の煽り文句が凄いです。
「“プロレスインポ”もこれでビンビン!!」
何とも下品ですが、本の内容自体もある意味下品。何しろ、第1章はティーン時代の性交渉自慢。しかも、やっていることが半端ではありません。「英雄色を好む」などといいますが、プロレス界のヒーローも例外ではなかったようです。
第2章以降は、文字通りプロレスラーとしての自伝なので安心して読めます。
私自身は1980年代のフレアーに思い入れがあるので、当時のエピソードがいちばん興味深く読めました。たとえば、私のpage
全日本プロレス・グランドチャンピオンカーニバルII (1984年)
で、「ケリー・フォン・エリックからフレアーへの王座移動が日本で行われたのは意外だった」と書きました。しかし、フレアーの自伝でケリーに触れた部分を読み、件の王座移動は意外でも何でもなく、逆に日本でなければならない事情があったことが判りました(ここでは詳述しません)。つくづく、プロレスは奥深いと感じます。
もちろん、1990年代以降のWCW,WWE時代のフレアーについても語られています。殊に、WCW時代の不遇の扱いに対し、信じられない程に気弱な一面を見せているのは印象的。
アメリカン・プロレスの最近30年の歴史を描いた資料としても重要な「トゥー・ビー・ザ・マン」は、プロレスファンなら是非とも読むべきだと思いました。
私はもうビンビンです。
それにしても、この本が出版されたのは、アメリカのプロレスがショーとしてカミングアウトしているおかげだと思います。日本ではそのようなカミングアウトは余りなされていませんが、ミスター高橋氏の著書「流血の魔術・最強の演技」(私の感想文)などを通じて、プロレスの仕組みが多くのファンに理解されている状況だからこそ日本語訳が実現したのでしょう。私自身、予め高橋氏の書物を読んでいて良かったと思いました。
【参考サイト】
リック・フレアーを語る(Michael's Space)
リック・フレアーのファンやレスラーからの評価について、的確に詳述されています。
リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン(HILOG)
上の私の文章とは異なる視点からの書評です。