交通誘導を行う警備員が特別な法的権限を持たないことは有名だと思われます(後述の警備員法第15条)。ですから、仮に警備員の誘導に従わなかったとしても、そのことを理由に罰せられることはありません(とは言え、誘導を無視して事故を起こしでもしたらそれなりの責任が問われることになるでしょうが)。
当ブログでは歩行者優先問題を扱いますから、当エントリでは歩道または横断歩道での警備員のみを扱います。代表的なのは、企業施設や店舗等に面した歩道や無信号横断歩道での交通誘導です。私の行動範囲の中で判断する限り、この種の警備員は歩行者優先の法律をちゃんと守っているケースが多いと感じられます。少なくとも無信号横断歩道での車などよりよっぽどマシです。企業に委託される立場ですから、法を守らないという悪評が広まるリスクを避けているのかも知れません。
ただ、ごくたまに歩行者優先を守らない警備員も居ます。たとえば、私がよく通る無信号横断歩道から50メートルほど離れた日立テクノパークの西門前(横浜市戸塚区吉田町)では通常2名の警備員が働いていて、施設に出入りする自動車を円滑に通すための誘導を行っていますが、時々歩道を通行する歩行者の優先を阻害するかのような強引な動きをするのが日頃から気になっていました。施設前の市道は広くない割に時間帯によっては交通量が多いため、施設に入ろうとする大型車両などを待たせると渋滞が発生する可能性があることは確かです。警備員が焦って車を早めに通そうとする気持ちは分からないでもないですが、だからと言って、歩道上では歩行者が優先するという法律(後述の道交法第17条)を蔑ろにする権限は警備員にはありません。もしどうしても歩行者を止めて車両を先に通したいのなら(そのような状況が滅多にあるとも思えませんが)、歩行者に丁寧にお願いして許可を得てからそのように誘導するのが筋というものです。
先日11/23(水祝)の朝、私がこの歩道を通行して西門前に差し掛かっていたにもかかわらず、警備員の一人が車道で待っていた大型トラックを施設内に通そうという動きを見せたので、私は警備員に対してすかさず「コラ! 歩行者優先! 通せ!」と大声で一喝しました。すると、もう一人の警備員が特に表情を変えずに「どうぞ」と言って先に私を通しました(当然のことです)ので、私もそれ以上何も言わずに通過しました。仮に彼らが私に対して文句をつけてくるようなら、即座にこちらの法的正当性を主張した上で日立に抗議電話を入れるつもりでした。今後も同様です。
なお、私は常に下記の文書をプリントアウトしたものを持ち歩いています。もし歩道上で警備員に強引に止められた場合は、このプリントを警備員に渡してこちらの法的正当性を主張します(とは言え、この程度の内容は警備員なら承知だと思われますが…)。もしそれでも文句をつけてくるようなら雇い主に抗議電話です。
歩行者の法的優先を阻害する存在を私は許しません。
では、以下にそのプリントを引用して締めます。
警備員が歩道を横断する車両よりも歩行者を優先して誘導をすべき法的根拠
(A) 道路交通法 第十七条
車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
(B) 警備業法 第十五条
警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。
(A)の1項ただし書きおよび第2項より、車両が道路外の施設に出入りするために歩道を横断する際は、歩行者の通行を妨げてはならない(すなわち歩道上では車両より歩行者が優先)ということがわかります。しかも、直前での一時停止も義務付けられています。
更に、(B)より、警備員が他人の権利を侵害したり、特別な権限を行使したりしてはならないことがわかります。
以上より、警備員は歩行者が優先的に歩道を通行することを妨げてはならないという結論が得られると思われます。