2005年02月28日

「反学歴社会」を検証してみる

先ほど、2chのニュース速報+板の“イラクの場所が分からない大学生(参考)”関連のスレッドを読んでいたら次のような書き込みが目に留まりました。
258 :名無しさん@5周年 :05/02/25 07:33:43 ID:QgVcqC2f
まぁアメリカはともかく、イラクはちょっとわからないのが普通じゃない?
ガリ勉君は別としてw

265 :名無しさん@5周年 :05/02/25 08:14:13 ID:Shvyiq24
>>258みたいに
「物を知らない方が当たり前、知ってる・知識がある人を悪し様に言う」
って風潮はいつごろから出てきたんだろうね?
だんだんその手の連中の方が多数派になりつつあるから恐い世の中だ。

基本的に、学問というのはそれ自体が何らかの価値をもつので、知識がある人を悪し様に言うのは良くないと思います。この点は265氏に同意。

でも「物を知らない方が当たり前」は、あながち間違いではないと思います。何故なら、現在の日本では学歴・知識がある人が必ずしも報われないシステムになっているからです。

 
たとえば、日本では学歴が高い方が就職に不利というケースが少なくありません。主に大学院卒に目立ちます。「大卒・新卒のみ」のような採用基準を設ける企業や団体は少なくないはず。実は私もそれによって就職の選択肢が狭まった経験があります。当時は世の中そんなものなのか、と受容していましたが。しかし、よく考えると何故なのでしょうか。そのような企業は「大学院で身につける学問は仕事に不要」「on the job trainingで身につける技能の方が役立つ」と思っているのでしょうか。直接的にはそうかも知れません。でも、それなら大卒規定を外して高卒でも採用するのが筋だと思います。大学の学部で身につける学問も、その意味では大して役に立たないからです。

明治学院大学社会学部助教授の稲葉振一郎さんの日記「インタラクティヴ読書ノート別館の別館」の昨年11月29日付けの記事から引用。
まあもちろん分野によって事情は違うので、ここでは人文社会系の研究者志望の方を念頭において、さるお方のとてもとてもありがたい箴言をご紹介します。
「東大で大学院に入るのは自殺行為、それ以外の大学で大学院に入れるのは殺人。」
(c)飯田泰之

【参考】 飯田泰之さんのPROFILE
駒澤大学の専任講師のようです。
 大学院進学はまちがいなく自殺行為である
上記の稲葉氏の記事に言及して詳しく書かれた記事。この方も高名な研究者だと思います。

このような論が出てくる背景には、文科省の大学院重点化政策で大学院生が増えたものの、研究者としてやっていける人は才能と意欲に恵まれた一握りでしかなく、一握り以外の人の就職先が確保されていない、という事情があります。このような事情は人文社会系、理系問わず存在するようです。

なお、人文系大学院の現状の一面については、次のサイトも参考になります。
 これから人文系大学院へ進む人のために


これまでの話とは少し次元が異なるかも知れませんが、近年では大卒が高卒よりも不利になる場合さえあります。先月、短大卒・大卒であることを隠して勤務していたバスの運転手が懲戒免職になった事件が話題になりました。
 学歴を低く偽り2人免職 青森市営バスで3人目
このニュースに関して各所blog等の記事を眺めてみると、「規則違反なのだから懲戒免職は仕方ないが、大卒だと運転手になれないのはおかしい」という意見が目立ちました。私も基本的に同意します。

青森市営バスがこの規定を採用したのは1996年のこと。つまり、それ以前は大卒でも採用していたことになります。どうも、世の中は反学歴社会の方向へ向かいつつあるように感じられます。この傾向の背景には、
● 一頃の学歴社会や“受験戦争”なるものに対するメディアの批判による反動
● いわゆるバブル崩壊後の慢性的な雇用不安
があるのではないでしょうか。

以前、フィンランドの教育事情に書いた通り、勉強しても報われないのであれば、日常生活に不要な知識など意義無し、と判断するのも当然だと思います。果たして現状で良いのでしょうか。良いのであれば、教育関係者の皆さまは児童生徒たちに「勉強すると将来不利になる可能性がありますよ」と正しい情報を伝える責務があると思います。前述の稲葉振一郎さんたちのように。

もし、現状のままでは好ましくなく、より多くの人が学問を身につけるべきならば、学んだ人が報われるような仕組みになるように、政治家や財界人が努力すべきだと思います。フィンランドの教育事情では、経営者の学歴観変革を提言しましたが、更に政治の力で「大学院卒の人の雇用は確実に保証されなければならない」という法律を作れば、多くの人が大学院に進学して安心して学問に勤しむようになりますよ、と大胆提言をしておきます。ただ、そのような学問重視社会が良いかどうかは議論の余地があると思いますが。
posted by D Slender at 01:58 | 鳥取 ☁ | Comment(2) | TrackBack(2) | 科学・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
実のところ、採用に関しては学歴よりもむしろ年齢が重視されているようです。高卒だと若すぎるために辞められる可能性があり、かといって院卒だと歳をとりすぎている、と思われるようです。
Posted by Red cat at 2005年02月28日 14:05
なるほど。年齢制限を設けるのが収益上有利、と企業側が経験則から確固たる信念で判断しているのであれば、私としては文句をつける筋合いはありません。その場合、学生にとっては、学部時代は適当に単位が取れる程度に勉強(もしくは手回し)するのが最も賢いということになりそうです(と、皮肉まじりのコメント)。
Posted by D Slender at 2005年02月28日 16:34
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

出世の手段としての学問
Excerpt: 社会人になって何年もたってから、林望氏の「知性の磨きかた」という本を読んだ。語り口調の文で非常に読みやすい本だ。 この著書の中で林氏は、福沢諭吉の「学問のすゝめ」や、本居宣長の「うひ山ぶみ」を引..
Weblog: 今日の論点 未来の視点
Tracked: 2005-03-11 22:20

「学歴逆差別」は止めよう
Excerpt: 過去エントリ 「反学歴社会」を検討してみる 神戸市学校職員の学歴詐称 に関連するニュースです。 「高卒」と偽り就職=勤続10年、大卒職員免職−兵庫県尼崎市(時事) 兵庫県尼崎市水道局は31日、4年..
Weblog: dslenderブログ
Tracked: 2007-02-01 07:58
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。