2005年02月03日

フィンランドの教育事情

※(2013.9.19追記)リンク切れを幾つか修正しました。

昨年12月に文部科学省は、2003年に実施された国際的学習到達度調査(PISA)の結果分析を公表しました。
【資料A】PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査(文部科学省)
今年に入ってから各メディアで関連ニュースが報道されています。

特に、総合読解力でTOPで、他の分野でもトップレベルに食い込んでいるフィンランドに着目する人が多いようです。何故フィンランドの学力水準は高いのか? 

そこで、フィンランドの教育事情を扱っているPageをいくつか拾ってきました。

【資料B】 フィンランド共和国教育事情調査報告(文部科学省)
中央教育審議会のpage。学力水準でトップクラスにあるフィンランドに学ぼうではないか、という趣旨です。1995年以降、修士の資格がないと教員になれないようにするなど、教員の資質を高める努力をしていることに着目しています。

教員の学力的資質向上は、確かに成功の一因でしょうが、僅かな一因に過ぎないと思います。たとえば、生徒の側に学ぶ動機や素養が無ければ無意味です。 
【資料C】 フィンランドの教育制度(世界と日本の教育)
  • 7歳から15歳まで総合学校(義務教育)に在籍し、この間の費用は無料。

  • 16歳〜19歳が中等教育で、高校と職業専門学校の2種類がある。

  • 高等教育は大学と高等職業専門学校の2種類がある。

  • 現時点では、大学卒業者には大学院卒業資格(修士)が与えられる。
概略は以上のような感じでしょう。日本の大学に比べて長く在籍し、卒業必要単位が多く課されるので、必然的に「大学卒業 = 修士取得」になっているようです。

【資料D】 フィンランドの家族政策と教育制度(介護ウェブ)
大学はすべて国立(個人的には少し驚き)で職業大学校は公立。住居手当、勉学手当てを国から受けることができる。どうやら、(同じ所得だと仮定すれば)日本の平均的大学生よりも少ない経済負担で学べる環境が整っているようです

【資料E】 フィンランドの教育制度(フィンランドで雑貨商を営む方のpageでしたが、残念ながらリンク切れです)
ここで一つ特筆する必要があるのは、「学生でも正式な社員になれる」もしくは「なろうとする」文化の違い。フィンランドで大学に通うということは、すなわち「修士号を取る」ということで、少なくとも5年間は学生として勉強をする(近く制度が変わり、学士号だけで卒業することが選択可能になるが)。こちらでは30歳でもまだ修士号取得に向けて勉強している人もいるし、「学生」の身分のまま正社員になるのは、フィンランドでは当たり前のこと。こういった背景から優秀な学生は企業から引き抜かれ、数年後に休みをもらって修士論文を書き上げる、なんてことが頻繁に起きるのだ。

日本との決定的な違いの一つがここにあると思います。日本では、正社員が休みをもらって修士論文を書く、という文化はないはずです(一部の企業にはあるのかも知れませんが)。その代わり、多くの企業では、休みを取ると周囲から冷たい目で見られるという文化があるはずです。

【資料F】 フィンランドに留学なさっている方のブログ記事。現地で学んでいる方の意見には、やはり臨場感と説得力があります。
フィンランド教育事情・・むりやり語ってみる (上)
フィンランド教育事情・・むりやり語ってみる (中)
フィンランド教育事情・・むりやり語ってみる (下)
(中)を読んでみると、フィンランドの学生の熱心さや、鍛えられた学力の様子が分かります。
そつがないというか、勉強の要領がいいと感じます。これは批判でも揶揄でもなく、羨望です。勉強に関して無駄な動きがない。ぶれない。

ただし、次のような側面もあるようです。
学生全体で型にはまっているかも。極端なアホは見掛けないけど、ものすごい天才もあまりいない。

平均的な高学力をよしとするか、一握りの天才の出現を重視するか。これによって、教育のあり方も違ってくると思います。両立するのが理想なのでしょうが…

最後に、少し長くなりますが、(下)から引用。
「日本はフィンランドに比べて学歴社会ではない」とした方が正確かもしれません。日本の中小企業の経営者、それも活躍されている方々は高卒や無名大学出身が多いです。逆に博士号や修士号は、一般就職にマイナスになることもありますよね。特に文科系。高学歴、学位そのものが一般社会であまり評価されない。

日本とフィンランドとでは、教育や学歴に対する社会の見る目が違うということ。フィンランドの教育改革の実例をそのまま日本に当てはめてうまくいくか、疑問に思えてきます。
教育(学歴)の質とは、社会・世間によって大きく左右されるんではないか。日本の場合、それがOJT(会社内での現場トレーニング)や資格が重視され、フィンランドは大学・大学院経由の学歴がそのまま社会評価に反映している。そんな感想です。日本では教育制度が危機とか。僕は具体的制度やその改革の良し悪しは分からないです。でも、「勉強するのがダサい」とか「がり勉、キモイ!」のマイナス評価だと、そりゃやる気が出ませんよ。社会の風潮とか動機付けも考慮しないと。

もし学力水準を本気で上げたいなら、教師の質の向上とか、法改正とか、ゆとり教育撤廃とか、その程度の小手先な施策では駄目なのではないでしょうか。企業経営者をはじめとする様々な人々の学力観、学歴観が変わることが必要かも知れません。


posted by D Slender at 11:39 | シンガポール ☁ | Comment(3) | TrackBack(3) | 科学・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フィンランドの教育制度にとても興味を持っており、検索エンジンでこちらにたどり着きました。
貴重な資料とのリンクを公開してくださってありがとうございます。トラックバックをさせていただいてもよろしいでしょうか?
Posted by bee at 2005年11月10日 06:35
この、フィンランドの教育について、とても参考になりました!

これから、フィンランドに1年行ってくるので、とても参考になりました。

さまざまなとても有意義なリンク先のご紹介と、わかりやすい文章・分析に感謝申し上げます。

ありがとうございました。
Posted by 丸山 at 2007年01月18日 20:24
というかこれフィンランドに限らず外国全体がそうですよね。
日本は職と勉強の接続が希薄すぎるんですよ。
けどそれは社会が教育に信をおかなければいけないし。教育がそれに答えなければいけない。
Posted by デリカ at 2012年06月27日 12:02
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