「鞆の浦」工事差し止め=景観「国民の財産」と初判断−調査、検討不十分・広島地裁
広島県福山市の景勝地「鞆(とも)の浦」の埋め立て・架橋計画について、住民ら約160人が歴史的景観が損なわれるとして、県を相手取り、埋め立て免許交付の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は鞆の浦の景観は「国民の財産というべき公益」と指摘、事業の必要性に関する調査、検討が不十分だとして、被告側に許可しないよう命じた。
景観を理由に公共事業の差し止めが認められるのは初めて。判決は開発と環境保護をめぐる議論にも大きな影響を与えるとみられる。
能勢裁判長は、事業について「景観に及ぼす影響は決して軽視できず重大」と指摘。山側にトンネルを掘る案でも道路の混雑は解消される可能性があるとし、埋め立てについて「景観保全を犠牲にしてまでもしなければならないか大きな疑問が残る」とした。
駐車場不足の解消など他の事業実施の根拠についても調査、検討が不十分とし、埋め立ての必要性を認めることは合理性を欠き、許可は知事の「裁量権の範囲を超える」と認定した。
万葉集にも詠まれ、江戸時代の港湾施設も残る鞆の浦は、宮崎駿監督が映画「崖(がけ)の上のポニョ」の構想を練った地ともいう。
あとで追記します。