2009年05月10日

検疫法に基づく「停留」への所感

カナダ帰りの男子高校生ら4名が新型インフルエンザに感染したことに伴い、飛行機内で周囲2メートル以内にいた人々が「停留」という名の軟禁状態にある件について書きます。

まずは基礎知識から。「停留」は検疫法という法律に基づく強制力のある措置であり、従わない場合の罰則も定められています。関連する条文を引用します(全文はたとえばhouko.comで参照できます)。
第2条 この法律において「検疫感染症」とは、次に掲げる感染症をいう。
1.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に規定する一類感染症
2.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する新型インフルエンザ等感染症
3.前2号に掲げるもののほか、国内に常在しない感染症のうちその病原体が国内に侵入することを防止するためその病原体の有無に関する検査が必要なものとして政令で定めるもの

第14条 検疫所長は、検疫感染症が流行している地域を発航し、又はその地域に寄航して来航した船舶等、航行中に検疫感染症の患者又は死者があつた船舶等、検疫感染症の患者若しくはその死体、又はペスト菌を保有し、若しくは保有しているおそれのあるねずみ族が発見された船舶等、その他検疫感染症の病原体に汚染し、又は汚染したおそれのある船舶等について、合理的に必要と判断される限度において、次に掲げる措置の全部又は一部をとることができる。
(「隔離」に関する第1項を省略)
2.第2条第1号又は第2号に掲げる感染症の病原体に感染したおそれのある者を停留し、又は検疫官をして停留させること(外国に当該各号に掲げる感染症が発生し、その病原体が国内に侵入し、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときに限る。)。

第16条 (中略)
2 第14条第1項第2号に規定する停留は、第2条第2号に掲げる感染症の病原体に感染したおそれのある者については、期間を定めて、特定感染症指定医療機関、第1種感染症指定医療機関若しくは第2種感染症指定医療機関若しくはこれら以外の病院若しくは診療所であつて検疫所長が適当と認めるものに入院を委託し、又は宿泊施設の管理者の同意を得て宿泊施設内に収容し、若しくは船舶の長の同意を得て船舶内に収容して行うことができる。

第35条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。(中略)
2.隔離又は停留の処分を受け、その処分の継続中に逃げた者

第36条 次の各号の一に該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(中略)
5.第14条第1項第1号から第3号まで、第6号又は第7号の規定により検疫所長又は検疫官が行う措置(第34条の2第3項の規定により実施される場合を含む。)を拒み、妨げ、又は忌避した者

以上の法律への私の所感を次の段落で書きます。

検疫法の第2条では、新型インフルエンザが一類感染症とほぼ同格の扱いになっていますが、私はこれに違和感を覚えます。一類感染症といえば、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘瘡、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱。いずれも感染力・致死率ともに高い疾病たちです。一方、インフルエンザは感染力こそ非常に強いものの、致死率はさほど高くない場合が殆どです。実際、今回のウイルスも弱毒性のようです。尤も、致死率が低くてもゼロではないのだから最大限の用心が必要だと主張する人もいるでしょう。一理ありますが、私は納得できません。

私が為政者だったら、検疫法を改正して弱毒性新型インフルエンザに対する措置を強制力のない「停留勧告」程度に格下げします。法改正が無理だったとしても弱毒性と判明した時点で為政者権限で強制停留を解除します。もしそれによって国内居住者に伝染したとしても、弱毒性である限り季節性インフルエンザ同様に少し時間が経てば流行は確実に収まるはずですから、予防は国民の自己努力に任せます。

そんなわけで、今回の新型インフルエンザに対する日本政府の対応は、過剰・大げさ・やり過ぎ・行き過ぎだと思われてなりません。

私は日本以外の国に住みたいと思わないですし、できれば海外旅行もしたくないくらいに日本が大好きです。しかし、衛生に関して潔癖すぎるのが日本のささやかな欠点だと思っています。

【後刻追記】検疫法に新型インフルエンザが盛り込まれたのは昨年5月の改正時です。そもそも強毒性になるおそれが大きいとされたトリインフルエンザ対策のための改正だったわけで、弱毒性インフルにそのままあてはめるのは如何なものかと思います。
posted by D Slender at 21:09 | ムンバイ | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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